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2023年1月 7日 (土)

【安全対策】海難審判所の裁決事例(手漕ぎボート)について

年初めに「安全対策」について考えておきたいと思います。

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みなさんは、手漕ぎボート釣りの最中に事故に遭う可能性を考えたことがありますか?

かくいう僕も手漕ぎボート釣り歴がすっかり長くなり、海の上はただ最高に楽しい場所とばかり考えてしまっています。

でも、手漕ぎボート釣りを始めた頃、たくさんの不安があったことを思い出します。

・波で転覆したりしないのかな?
・風や海の流れに流されたりしないかな?
・落水して溺れたりする可能性も・・・?

これら初心の恐れは決して幻ではなく、海の上には実際に様々なリスクがあります。大げさではなく、一歩間違えれば命にかかわりがある危険な場所なんです。


実際に、平成25年には僕達にすぐ身近な海で悲しい事故が起きたこともあります。

そういった事実を忘れず、心に留めておくことも、大切な安全対策のひとつなのかな、と思います。



🏁🏁🏁



そんな思いもあり、年に1回僕は手漕ぎボートの事故情報を集めるようにしてます。

いつも調べているのは全国の海難審判所の裁決事例と、神奈川新聞ニュース(カナロコ)の海難事故に関する記事です。

(リンク)海難審判所の裁決事例
(リンク)カナロコ 海難事故

*裁決事例のネット検索はいつのまにかいくつかマイナーチェンジがされたようです。
・閲覧できる裁決事例の期間が制限(約2年?)され、古い事例は閲覧できなくなりました。
・事故の当事者の名前(船名)が匿名となり「A」や「B」等の記号表記になりました。


手漕ぎボートの絡む海難事故の裁決事例は今回「3件」見つかりました。

幸い、いずれも命の絡む事故ではありませんでした。

簡単に概要を紹介します。


<横浜地方海難裁判所>
裁決言渡日R4.10.13 事件番号4-18
漁船A手漕ぎボートB衝突事件

※より詳細に知りたい方は上の事件番号等で検索してみてください(期間制限あり)。

この事故をざっと説明すると「貸しボート店から手漕ぎボートを借り、沖合でアンカーを下ろして釣りをしていたところ、漁船が突っ込んできて衝突してしまった」というものです。

手漕ぎボート側は距離500mの時点で近づく漁船に気付いており、「あの進路なら大丈夫だろう」と判断していましたが、距離70mで漁船側が急に進路を変え衝突してきました。

当時の天候は晴れ、風力1の北北東風で、視界は良好。

衝突の結果、手漕ぎボートの乗船者が肋骨骨折の重傷。命にかかわる事態に至らなくて、本当に良かったと思います。


この事故、どちらが悪いと思いますか?

釣り人が乗っていたのはレンタルの手漕ぎボート。まさに私達が普段親しんでいるボートと同じです。アンカーを下ろして釣っているので、急には移動できません。漁船のほうに責任があるに決まってる、と感じる方もいるかもしれません。

僕も正直、こんなケースで漁船が急に転進して突っ込んできたらどうしようもないのでは?、と思います。

しかし、実際の海のルールで判断されるこの審判事例では「手漕ぎボート側にも一因がある」ということが指摘されています。

・適用される法律「海上衝突予防法 第38条及び第39条」(この条文は包括適用文です)
・(原因①)漁船側の見張り不十分。
・(原因②)手漕ぎボート側が衝突を避けるための措置(音響による警告、避難行動)をとらなかったこと。

この事例の特徴は「救命胴衣に笛がついていた」ことです。自前のライフジャケットだったかどうかは明記されていませんが、衝突の前に思いっきりその笛を吹いて警告を発していたら、あるいは漁船側が気付いて回頭していたかもしれません。

例えレンタル手漕ぎボートであっても、海に出る人には「有効な音響による警告手段」を備えておく責任があることは認識しておいたほうが良いと思います。

(参考)過去記事「【安全対策】緊急用のホイッスル。用意してますか?」


そのほかの2件の手漕ぎボートが絡む海難事故の裁決事例を挙げておきます。

<門司地方海難裁判所>
裁決言渡日R4.8.25 事件番号4-13
遊漁船A手漕ぎボートB衝突事件

・鹿児島県秋目湾。
・シーカヤックと遊漁船の衝突事故。
・シーカヤック側の右腰椎横突起骨折。

<門司地方海難裁判所>
裁決言渡日R4.8.23 事件番号3-38
漁船A手漕ぎボートB衝突事件

・山口県奈古漁港。
・シーカヤックと漁船の衝突事故。
・シーカヤック側の右立方骨剥離骨折等。

いずれも状況が似通っているので、詳細は割愛します。



🏁🏁🏁


いつも書いていることなのですが、大切なことなので繰り返し書きます。

僕は平成18年以降の裁決事例の中の手漕ぎボートが絡む事例はすべて内容をチェックしてきていますが、その中で強く感じることがあります。

それは「衝突事故は、穏やかで晴れ渡った、視界良好な海でばかり起こる」ということです。

おそらく、穏やかで安全そうな海だからこそ、「今日は大丈夫だろう」と注意が散漫になり「まさか」の事態が起こってしまう・・・、そんな共通項があるように感じます。

私達は忙しい日常からの開放を求め、趣味で海に出ています。穏やかで暖かな癒しの海であれば、船上で眠ってみるのも悪くありません。こういった小さな楽しみを邪魔されることなんて、考えたくもありません。


しかし、手漕ぎボート釣りを一生の趣味とする人であれば、やはり「海の危険」を忘れてはいけないと思います。

・常に、周囲の状況を観察する(他のボートの緊急事態にも気付けるように。助け合いの意味も重要です)。
・転覆のリスクに備え、ライフジャケットを正しく着用し、携帯電話・財布・車のキーは必ず水没対策をしておく。


以下の過去記事についても、ぜひあらためてご参考ください。
(ボート釣りで実際に転覆を経験された貴重な体験談もご紹介しています)

リンク → 【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その1)

リンク → 【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その2)


事故や転覆は場合によって避けることができませんが、少なくとも落水による被害は日頃の対策次第で防ぐことができます。この機会に改めてご自身の対策を確認してみてはいかがでしょうか。



🏁🏁🏁



ここにきて京急大津の水温がかなり下がってきてますね。すぐにも12度を切りそうな勢いです。

落水時のリスクが非常に高くなってくる水温です。

大津の冬のアジは美味しいですが、ご出撃の際にはぜひ一度安全対策についても再チェックをしてみてください。





2020年1月12日 (日)

【安全祈願】深川八幡さまへお参りしてきました。

2020年の手漕ぎボート釣りの安全祈願です!

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近年、天候運や仕事多忙でだいぶ釣行が伸び悩んでいる僕ですが、年に1回欠かさず継続していることが2つ。

それが大津の海苔棚位置計測と、この「富岡八幡宮さまへの釣行安全祈願」です。

 

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今年は1月12日(日)に行ってきました。

このお参りでは、毎年手漕ぎボートを趣味にされているすべての方々の釣行安全を祈願しています。
「大漁」は2の次。一番大切なことは「安全」なので、願い事はひとつだけ。

どうか、今年1年手漕ぎボート釣りを愛するみなさんが安全に海に親しむことができますように。

 

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青空に良く映える建物ですが、曇りでも一層鮮やかさが引き立ちますね。

 

 

でも、お参り後にお守りを買う時には、うって変わって自分の大漁祈願をしちゃいます!

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大・小あるうち、今年も「大」を購入。やっぱり大物運が欲しいんです(^_^;)

 

今年もこのお守りを購入しました。
これから1年間の釣りではずっと一緒です。

 

🏁🏁🏁


この時期の恒例がもうひとつ。
海難審判所の裁決事例の確認です。

2019年1月から10月までの全国の裁決事例をインターネットで確認してみたところ、幸い手漕ぎボートの絡む海難事故はひとつも見つかりませんでした。また、カナロコ(神奈川新聞)サイトの海難事故まとめでも、手漕ぎボートの事故が見当たりませんでした。

いつも少し緊張しながら検索するのですが、ホッとすることができました。
今年も無事故が続きますように。

 

【参考サイト】

(リンク)海難審判所の裁決事例

(リンク)カナロコ 海難事故

 


🏁🏁🏁

 

大津の海水温がようやく14度を切りました。今年の東京湾の水温は約10年ぶりの高さになっています。

外海側はさらに高く、まだ17度以上も!釣況への影響も大きいですが、安全面でも考えても影響はあります。

これだけ高いと、海中に転落した時の低体温症リスクは低下します(意識喪失までの時間が長くなる)

 

安全対策の初心を思い出すきっかけのひとつとして、過去に手漕ぎボートの安全対策について取り上げた記事へのリンクを置いておきます。
もしお時間があれば、お目通し、あるいは再度の読み直しをお願いしたいと思います。

僕自身への戒めでもあります。ある程度慣れてしまうと、最初の頃の緊張感は思い出せなくなってしまうものです。
どんなに気をつけていても防げない転覆が起こり得ることは、あらためて肝に銘じておきたいと思います。

 

(参考)手漕ぎボートの安全対策についての過去記事リンク

・【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その1)

・【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その2)

 

転覆は、日頃の対策次第で深刻な被害を防ぐことができます。この機会に改めて自身の対策を確認してみてはいかがでしょうか。

 

🏁🏁🏁


今年は水温が高いせいか、年を越えても豊富な魚種の釣果が聞こえてきます。
特に大津のヒラメフィーバーは凄い!ワラサもまだ出ています。熱い冬ですね♪

僕も出られると良いな・・・(遠い目

 

 

 

 

 

 

 

2019年1月 9日 (水)

【安全祈願】深川八幡さまにお参り+昨年の海難事故チェック結果

今年の手漕ぎボート釣りの安全祈願です


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年始の富岡八幡宮(深川八幡)さまへのお参り。7年目になる恒例イベントです







今回は1月6日(日)に行ってきました。


深川八幡さまは晴天だと社殿が青空にとても映えて美しいのですが、今回は曇り空。それでもやはり、下町の八幡さまは独特の親しみのある風情に包まれていました



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写真の明るさをいじったら青空っぽくなった??(^。^;)


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午後だったせいか、人もまばらでした。

本殿にお参り。


例年のことですが、手漕ぎボートを愛するすべての方々の安全をお祈りしました。
(大漁ではなく「安全」。忘れがちですが手漕ぎボート釣りは危険と紙一重です)


そして今年もお守りを新調しました。


こちらが奉納した昨年のお守り。


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1年間有難うございました。

そしてこちらが新しく購入した2019年のお守りです。


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今年もよろしくお願いします!!

ちょっと悩んだんですが、今年も2タイプある中で大きい針のほうにしました。


このお守りとは今年の釣行をずっとともにします







さて、これもほぼ恒例なのですが、昨年(平成30年)に発生した海難事故の情報を確認しました。


(リンク)海難審判所の裁決事例

(リンク)カナロコ 海難事故


結果、幸いなことに全国の海難審判所の裁決結果の中に、手漕ぎボートが関係するものはひとつもありませんでした。また、カナロコ(神奈川新聞)の海難事故情報にも見当たりませんでした。


本当に良かったと思います



しかし、海上では手漕ぎボートにも事故の回避努力をする責任があることを忘れてはいけません(主に海上衝突予防法、港則法)


詳細が公表されている過去の手漕ぎボート絡みの衝突事故には共通点があります。それは「晴天で穏やかな天候の時に起こった」ということ。


・ライフジャケットは正しく着用し、海上では絶対にライフジャケットを脱がないこと。
・自動膨張式のライフジャケットは必ず手動スイッチの操作を把握しておくこと。
・海上では背後も含め。常に周囲の状況の確認を怠らないこと。
・穏やかで見晴らし良く気持ちが良い時ほど、油断が生じて不注意が起こる可能性が上がること(自分だけでなく相手も)。
・自分がアンカーを下ろしているからといって、相手の方が避けてくれるはずと都合よく考えないこと。


あらためて、心に刻んでおきたいですね



(参考)手漕ぎボートの安全対策についての過去記事リンク

・【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その1)

・【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その2)







さて、年始恒例の記事はこれで一区切り。


次回は年間目標に沿った釣行の記事に・・・なるかな?


最も大切なことは「安全」。
今年も海の上での責任とともに楽しく歩んでいきましょう





2018年1月 8日 (月)

【安全対策】昨年(平成29年)の海難審判裁決事例について

久しぶりに、「安全対策」の記事をポストしておきます。


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年に数回、僕は手漕ぎボートの関係する海の事故の情報を集めるようにしています。


これは、海での経験が増えれば増えるほど忘れがちになってしまう「初心」を改めて思い出すため。もっと簡単に言えば、僕達が大好きな「海の上」は、一歩間違えれば命にかかわりがある危険な場所だ、ということを忘れないためです


実際に、平成25年には僕達にすぐ身近な海で悲しい事故が起きたこともあります。


そういった事実を忘れず、心に留めておくことも、大切な安全対策のひとつなのかな、と思います。







いつも調べているのは全国の海難審判所の裁決事例と、神奈川新聞ニュース(カナロコ)の海難事故に関する記事です。


(リンク)海難審判所の裁決事例
(リンク)カナロコ 海難事故


手漕ぎボートの絡む事故は今回、裁決事例で「1件」見つかりました。
幸い、命の絡む事故ではありませんでした。







簡単に概要を紹介します。


<横浜地方裁判所>
裁決言渡日H29.7.26 事件番号29-9
遊覧船第二三好丸手漕ぎボート(船名なし)衝突事件


※より詳細に知りたい方は上の事件番号等で検索してみてください。


この事故をざっと説明すると「港から離れた海でアンカーを下ろして釣りをしていた手漕ぎボートに、気付かず直進してきた3.8トンの遊覧船が衝突してしまった」というものです。


遊覧船側は前方不注意で手漕ぎボートの存在に気付かず、手漕ぎボート側も、釣り人の背後から接近だったため、衝突されるまで気付かなかったようです。


当時の天候は晴れ、風力2の東風で、視界は良好でした。


衝突の結果、釣り人が海に投げ出されました。その結果、釣り人が後頭部挫創を負ったほか,溺水による5日間の入院加療(急性呼吸窮迫症候群及び誤嚥性肺炎)となりました。
(命にかかわる事態に至らなくて、本当に良かったと思います



この事故、あなただったらどちらが悪いと思いますか?


釣り人が乗っていたのはFRP製でオール2本の手漕ぎボート。まさに私達が普段親しんでいるボートと同じです。アンカーを下ろして釣っているので、急には移動できません。プロの船長が操舵している遊覧船のほうに重い責任があるに決まってる、と感じる方もいるかもしれません。


僕も正直、こんなケースで大きな船の方が前をみていなかったらどうしようもないのでは?、と思います。



しかし、実際の海のルールで判断されるこの審判事例では「手漕ぎボート側にも責任がある」ということが指摘されています。


・適用される法律「海上衝突予防法 第38条及び第39条」(この条文は包括適用文です)
・(原因①)遊覧船側が見張り不十分で,漂泊中の手漕ぎボートを避けなかったこと。
(原因②)手漕ぎボート側が見張り不十分で,衝突を避けるための措置をとらなかったこと


過去にご紹介した裁決事例でも同じような状況は多いのですが、「海の危険を避けるための責任は、常に自分にある」と認識しておくことが必要だと思います







僕は公表されている平成18年以降の裁決事例の中の手漕ぎボートが絡む事例はすべて内容をチェックしていますが、その中で1番強く感じることがあります。


それは「衝突事故は、穏やかで晴れ渡った、視界良好な海でばかり起こるということです。


おそらく、海が荒れていたり、視界が悪ければ前方不注意にはならないんだと思います。穏やかで安全そうな海だからこそ、「今日は大丈夫だろう」と注意が散漫になり「まさか」の事態が起こってしまう・・・、そんな共通項があるように感じます


私達は忙しい日常からの開放を求め、趣味で海に出ています。穏やかで暖かな癒しの海であれば、船上で眠ってみるのも悪くありません。こういった小さな楽しみを邪魔されることなんて、考えたくもありません。



しかし、手漕ぎボート釣りを一生の趣味とする人であれば、やはり「海の危険」を忘れてはいけないと思います。


・常に、周囲の状況を観察する(他のボートの緊急事態にも気付けるように。助け合いの意味も重要です)。
・転覆のリスクに備え、ライフジャケットを正しく着用し、携帯電話・財布・車のキーは必ず水没対策をしておく。


以下の過去記事についても、ぜひあらためてご参考ください。
(ボート釣りで実際に転覆を経験された貴重な体験談もご紹介しています)


リンク → 【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その1)

リンク → 【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その2)







さて、今年はオマケ記事をくっつけておきます。


安全対策ではなく「安全祈願」になりますね



僕の恒例行事です。


今年も「深川八幡さま(富岡八幡宮)」にお参りにいってきました。


Anzentaisaku20181
初めてお参りの日が曇り空。社殿は青空の時より赤く見えました。

手漕ぎボート釣りを愛するすべての方々の安全を祈念。


同好のみなさんと一緒に、今年も安全に過ごせますように。



お参りのあと、釣行安全・大漁祈願のお守りを購入しました。


Anzentaisaku20182
すっかり欠かせなくなった深川八幡さまのお守り。今年もお世話になります。

昨年は、2種類あるお守りのうち、初めて大きな釣針が封じられているほうのお守りを購入したのですが、数少ない釣行の中で大物記録が更新されるという結果になりました(手漕ぎボートではありませんでしたが(^_^;))。


このお守りのご利益かもしれないので、今年も同じ方を購入しました。


しかしホンネでは、獲物の大小より「海に出る回数が増えますように


もう3年も我慢の時期が続きましたからね・・・







1番大切なことは「安全」

今年もみなさんと、安全第一で手漕ぎボート釣りを楽しんでいきたいです





2016年6月16日 (木)

【安全対策】最近(平成27年)の海難審判所の裁決事例について

1年半振りに「安全対策」の記事を置いておきます。


Saiketsujireih27


自分に言い聞かせる意味もあり、このブログでは時折「安全対策」の内容を扱うようにしています。(初心を忘れそうで、いつも不安なんです・・・


休漁状態が長かったので最近の情報には疎いんですが、どうも今年は各地の手漕ぎボートエリアから転覆事故の話が多く聞こえてくるような気がします



そこで久しぶりに1本、ポストしておくことにしました(今回のメインは転覆事故と無関係ですが







以前にも書きましたが、僕は定期的に海難審判所の裁決事例を読むようにしています。裁決の資料は一見つまらなそうにも見えるんですが、読み進めているとだんだんと「海の上にもルールがあること」が見えてきます。


実はこれ、手漕ぎボート釣りをする人にとって唯一の「わかりやすい海の法律の勉強手段」かもしれません。



小型船舶免許を取得する時、僕も海のルールを勉強したことがありますが、そこで分かったのは「手漕ぎボート」の存在は海の法律でほぼ無視されており、具体的な規定は無い、ということでした。


実際、教本をいくら勉強しても、「手漕ぎボートで釣りをする際の法律」がどうなっているのか全然わかりませんでした



しかし、だからといって海の手漕ぎボートに何の責任もないわけではありません。


海難審判所の裁決事例を実際に見てみると、手漕ぎボートが海難事件に関わった時、どんな法律が適用されたのか明記されています。そして、手漕ぎボートの乗船者が危険回避のために取るべきだった行動についても記述されています。


残念ながら、実際のボート釣りの現場目線から見ると、「そんなルール聞いたことないよ「準備もなしにそんな行動とれるわけないよ、と理不尽さすら感じてしまうレベルの内容が多いです


でも「実際に起こってしまった事故」の詳細な状況は、私たちにいろいろなことを教えてくれます。







ついつい忘れがちな「海の危険」。


関連するリンクを置いておきます。手漕ぎボート釣りを愛する方々には、ぜひ一度だけでも覗いてみていただければ、と思います。


リンク → 過去記事「【安全対策】海のルールをタダで学べる?海難審判所の裁決事例!」

リンク → 過去記事「【安全対策】最近の海難審判所の裁決事例について」

リンク → Wikipedia「海難審判所」

リンク → 海難審判所の裁決の閲覧サイト



また、過去記事には手漕ぎボートの転覆について情報をまとめたものがあります。もしまだお読みでなければ、こちらもぜひご一読ください(転覆は突然やってきます。今から備えておくことが大切です


リンク → 【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その1)

リンク → 【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その2)







さて、私たちの身近な海を管轄する海難審判所は「横浜海難審判所」です。


その平成27年の裁決事例の中に、1件だけ「手漕ぎボート(船名なし)」の文字が有るのを見つけました


その概要を紹介させていただきます。


<横浜地方裁判所>


裁決言渡日H27.8.12 平成27年横審第9号
漁船・手漕ぎボート(船名なし)衝突事件


※より詳細に知りたい方は上の事件番号等でご検索をお願い致します。



この事件をざっと表現すると、「アンカリングをして釣りをしている手漕ぎボートに、気付かず直進してきた2.6トンの漁船が衝突してしまった」、というものです。


当時の天候は晴れ、風力2の北東風。海は穏やかで視界も良好でした。原因として、漁船側が他の船の航走波に気をとられ、前方の見張りがおろそかになったことが挙げられていますが、手漕ぎボート側も「釣り竿の竿先に気をとられ」、危険が迫る状況に気付かず、一切の警告や回避の行動をとっていなかったようです。


衝突の直前、漁船の機関音で状況に気付いた手漕ぎボート乗船者は海中に飛び込みました。ボートは衝突で転覆しましたが、乗船者は衝突した漁船に救助され、病院に搬送。頸椎捻挫で全治2週間だったそうです(ライフジャケットは正しく着用)



この事件の内容について、気づいたことがいくつかあります。


・まず、穏やかで視界も良好なのに、衝突が起こってしまったこと(お互いに視界に捉えることは簡単だったはずです)。

・裁決上の原因として最初に挙げられているのは漁船側の「見張り不十分」ですが、並んで指摘されているのが「手漕ぎボート側も『見張り不十分』で、注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置を取らなかったこと」だということ(適用される法律)。



もし、自分だったらどうでしょう。


晴れ渡って視界の良い状況であったとしても、たまたま入れ喰いだったり、大物の気配で緊張感が高まっていたりしたら、視界外からの漁船の接近に気付けるでしょうか・・・?


「竿先に気をとられて見張り不十分」になってしまったりはしませんでしょうか・・・?



次に、今回適用されている海の法律です。


海の法律には主なものとして「港則法」、「海上衝突予防法」、「海上交通安全法」がありますが、いずれも手漕ぎボートを含む「ろかい船」等の「雑種船」には明確な考慮がありません。


今回の裁決では、「海上衝突予防法」の「第38条」、「第39条」が適用されています。 この条項は適用された判断として、「他に規定(該当)した条文がないから」と記載されています。


※つまり、手漕ぎボートの扱いに関する具体的な取り決めが無いため、包括条件的な条文が適用された、ということです。



以下に海上衝突予防法の第38、39条を引用しておきますので、ご参考ください。


(切迫した危険のある特殊な状況)
第38条 船舶は、この法律の規定を履行するに当たっては、運航上の危険及び他の船舶との衝突の危険に十分に注意し、かつ、切迫した危険のある特殊な状況(船舶の性能に基づくものを含む。)に十分に注意しなければならない。


2 船舶は、前項の切迫した危険のある特殊な状況にある場合においては、切迫した危険を避けるためにこの法律の規定によらないことができる。


(注意等を怠ることについての責任)
第39条 この法律の規定は、適切な航法で運航し、灯火若しくは形象物を表示し、若しくは信号を行うこと又は船員の常務として若しくはその時の特殊な状況により必要とされる注意をすることを怠ることによって生じた結果について、船舶、船舶所有者、船長又は海員の責任を免除するものではない。


【注意】海難事故の場所や状況によっては、他の法律が適用になることもあります。例えば過去記事で紹介したものでは「港則法」が適用になったこともあります。



個人的に、今回適用されたこの条文の内容は、「海の法律」としてよりも、海に関わる人間としての常識的な心構えを表していると思います。


海は身近で楽しく、そして同時に「恐ろしさ」も潜んでいる場所。


そのことを、改めて胸に刻みました







1番大事なことは「安全」。


頭では分かっていても、楽しい趣味の時間に緊張の糸を張り巡らせることはなかなか難しいです


でも、釣り人生は永く続いていきます。


できれば安全に関する心構えを体に染み込ませ、自然に危険を避けられるようになっていきたいものですね





2015年1月 7日 (水)

【安全対策】最近の海難審判所の裁決事例について

年頭にあたり、安全対策の記事を1本置いておきたいと思います。


今年は諸事情により、釣り初めがかなり遅くなってしまいそうな状況です


そこで今年の目標記事は後日ゆっくり書くことにして、まず安全対策の記事から始めたいと思います




以前の記事でも書かせて頂いたことがありますが、僕は定期的に海難審判所の裁決事例を読むようにしています。裁決事例を読んでいると、自然と海のルールへの興味が湧いてきます。一昨年、海のルールを学ぶために小型船舶操縦免許を取得しましたが、その大きなきっかけにも繋がりました。


同時に、裁決事例は個別の事故の詳しい状況を教えてくれ、忘れがちな「海の危険」を改めて考え直すきっかけを提供してくれます。


リンク 過去記事「【安全対策】海のルールをタダで学べる?海難審判所の裁決事例!」

リンク Wikipedia「海難審判所」

リンク 海難審判所の裁決の閲覧サイト


これらのリンクは、ボート釣りをする方にとってご一読頂いて損はないものだと思います。

もしお時間が許せば、ぜひ一度覗いてみてください







最近公開された裁決事例の中に、久しぶりに「手漕ぎボート(船名なし)」の文字が有るのを見つけました


そしてその海難事故は、この1年3ヶ月の間、ずっと気になり続けていた「あの事故」でした。



「あの事故」。


上にリンクを置いた過去記事をポストするまさに3日前、平成24年9月3日に鴨井沖で起こった不幸な事故です。僕は上の記事をポストした時にはその事故のことを知らず、その記事に頂たコメントの中で、初めて知るに至りました。


僕の知る限り、平成18年以降公開されている裁決事例の中では手漕ぎボートの絡む死亡事故はこれまでありませんでした。


非常に悲しい出来事なので、個別の内容を詳しく転載するつもりはありませんが、手漕ぎボート釣りを人生の趣味とされる方々には知っておいて頂きたいと感じることなので、敢えて僕個人の観点から咀嚼した内容をご紹介させて頂こうと思います。







<横浜地方裁判所>
裁決言渡日H26.10.21 事件番号25-38
漁船・手漕ぎボート(船名なし)衝突事件


※より詳細に知りたい方は上の事件番号等でご検索をお願い致します。


この事件をざっと表現すると、「アンカリングをして釣りをしている手漕ぎボートに、気付かず直進してきた4トンの漁船が衝突してしまった」、というものです。


当時の天候は晴れ、風力2の南南西風。海は穏やかで視界も良好でした。原因としては漁船の見張り不行き届きがありますが、手漕ぎボート側も一切の回避行動はとっていなかったようです。


衝突により手漕ぎボートの乗船者は海中に転落しました。その後、衝突した漁船に救助され、病院に搬送されましたが、残念ながら溺水吸引による死亡となってしまいました。



この事件の内容について読んでみて、気づいたことがいくつかあります。


・穏やかで視界も良好なのに、衝突が起こってしまったこと(意外性)。
・裁決上の原因として最初に挙げられているのが「雑種船側が、雑種船以外の船舶である漁船の針路を避けなかったことによって発生した」という指摘であること(事故の主因)。
・死亡原因が溺水吸引であり、他に外傷等の存在が記載されていないこと。


まず考えてしまうのは、海が穏やかで視界が良好な状況だった、ということです。


もし、自分が釣りをしている時に漁船が近づいてきたら、貴方ならどうされますでしょうか?
海が荒れていたりしたら、相手が見つけにくい可能性があるので、大きな危機感を感じるかもしれません。しかし穏やかでよく見える状況だったら・・・。


もしかして、「まさかこの状況で相手がこちらを見逃すはずはないだろう」と、油断してしまう要素になったりはしませんでしょうか・・・?



次に、海の上での法律です。
海の法律には主なものとして「港則法」、「海上衝突予防法」、「海上交通安全法」がありますが、いずれも手漕ぎボートを含む「ろかい船」等の「雑種船」には明確な考慮がありません。ただ、港則法では「雑種船以外の船の航路に停留(アンカリングと解釈して良いと思います)してはならない」と定められています。


今回の事故場所には港則法が適用されており、「航路」と見なされたようです。つまり、そもそもの原因としては手漕ぎボート側が停留してはいけない場所に停留していたことが指摘されている、ということになります。正直、航路ブイ等が明確な航路を示していない場合で、いったいどこが「航路」なのかは釣り人には分からない可能性もあると思いますが・・・。


※裁決文と一緒に公開されている「参考図」に現場の海の状況が図解されていますが、航路ブイ等は一切記載されていません。図を見る限り、釣り場全域が「港界線内」であるように見えます。


いずれにせよ、海の上ではまず「手漕ぎボート側に危険を回避する責任がある」と理解しておく必要があると思います。


「相手が避けてくれるだろう」は危険ですし、そもそも海のルールとしても許されません!



最後に、死亡に至ってしまった原因です。
当時の噂では「ライフジャケットを着ていなかったらしい」と聞いていましたが、今回の裁決事例を読んで、そうではなかったことが分かりました。手漕ぎボートの乗船者の方は救命胴衣を着ていたことが明確に記載されています。


ではなぜ・・・?


ここだけ裁決文の一部を引用します。


「乗船音は海中転落し、着用していた救命胴衣の胸部が開いた状態で救助され、病院に搬送されたものの、溺水の吸引による死亡と検案された」


「着用していた救命胴衣の胸部が開いた状態」・・・?
これは正直、どんな状況だったのか分かりません。しかし、救命胴衣を身に着けていたにも拘わらず、溺れてしまったという事実が示されています。想像になってしまいますが、救命胴衣の着用方法に問題があり、頭が海面に出るだけの浮力が得られなかったのかもしれません。


ライフジャケットはただ着ていれば良い、というものではありません。


実用に耐える品質のものを、正しい着用方法で身に付けなければ効果が得られないことを、改めて肝に銘じておく必要はあると感じます



今回の事故が教えてくれることは、とても多いと思います。
僕自身、この裁決事例を読んでみて、あらためて「まさか」の事態に想像を巡らすことになりました。


海は身近で楽しく、そして同時に「恐ろしさ」も潜んでいる場所。


そのことを、思い出しました







でも、自然と共にあることを人生の趣味とする以上、その怖さを避けるのではなく、うまく付き合っていく術を、身に着けたいものですね。


釣り人生は長いと思います。
やはり本当に大切なことは、「安全」。


これからもずっと永く、同好のみなさんと笑顔を交わし続けてゆきたいものですね





2014年12月 8日 (月)

【安全対策】京急大津の水温が15度を下回りました。

京急大津の海の水温が15度を切りました。


しばらく水温が下げ止まっていた大津の海水温が、先週末の厳しい冷え込みを受けて一気に下がり、先週土曜(12月6日)に15度を切りました。


海水温15度は手漕ぎボート釣りシーズンのボーダーラインです。



恒例の記事になります


このブログでは、例年水温15度が安全の観点から特別な水温であることをお伝えしています。海に転落した場合の低体温症による意識喪失までの時間が格段に短くなるからです。


詳細については、以下の過去記事へのリンクをご覧ください。


【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その1)

↑記事の前半に水温と意識喪失までの時間の一覧があります。


【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その2)

↑実際に転覆を経験された方の貴重な体験談を引用させて頂いています。


海釣りを人生の趣味にされている方は、普通の人よりずっと慎重に海の安全に配慮する必要があると思います。中でも、手漕ぎボート釣りには個人の力では避けられない「転覆・落水」の危険が、常に付いて回っていることを忘れないようにしなければなりません


特に、小さなお子さんとの釣行については、これから先の季節は天候・海況に係わる無理は絶対にするべきではありません。子供は大人よりずっと低体温症に弱いからです。


また、海の上に浮かんでいる時には、常に周囲のボートの様子も観察し、万が一、周囲のボートの落水事故を発見した場合、すぐにボート屋さんに連絡できるように準備をしておきましょう。


楽しさに気を取られて、つい忘れがちなことでもありますよね



同じような記事を書くことは普段出来るだけ避けていますが、安全対策に関することだけは、何度でも繰り返し書いていくつもりです。手漕ぎボート釣りを愛する方々と、ずっと永く一緒に楽しく過ごしていくために、一番大切なことだと思っていますので・・・







海況についての情報を取りまとめ、今後の水温の見込みを書いておきたいタイミングでもあるのですが、詳しい記事を仕立てる時間が取れず、残念ですが細かい話は省かせていただきたいと思います


少しだけ箇条書きに・・・。


・今年の大津の海水温は現在、例年並みかやや低いと言える状況にまで下がってきました。

・しかし、これは寒波の影響で急激に下がった面があり、必ずしも海水温の低下が早く進んでいく要素が揃っている訳ではありません。

・現在、黒潮の本流がかなり関東に接近してきています。

・その接近に伴う黒潮系沖合水の大規模な流入が、まさに本日あたりから始まっています。

・12月8日16時に、神奈川県水産技術センターから黒潮分流によると思われる急潮注意報が発令されています。この状況が続くと、また少しの間は海水温の低下には歯止めがかかると思われます。


既に冬の海になってきている、という話もチラホラと聞こえてきていますが、個人的には、もうひと潮くらいの間は、晩秋の海の面影が残ることに期待したいなぁ、と思います





2013年12月11日 (水)

【安全対策+妄想?】京急大津の海水温が15度を切りました。

京急大津の海の水温が15度を切りました。
また、今年の海水温について気になることがあります。


12月7日(土)、この秋初めて大津の海水温が15度を切りました。海水温15度は手漕ぎボート釣りシーズンのボーダーラインです。



恒例の記事になります


このブログでは、例年水温15度が安全の観点から特別な水温であることをお伝えしています。海に転落した場合の低体温症による意識喪失までの時間が格段に短くなるからです。


詳細については、以下の過去記事へのリンクをご覧ください。


【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その1)

↑記事の前半に水温と意識喪失までの時間の一覧があります。


【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その2)

↑実際に転覆を経験された方の貴重な体験談を引用させて頂いています。



潜在的な危険は、時間の長さによって増大します。つまり、海釣りを人生の趣味にされている方は、より慎重に安全に配慮する必要があると思います。中でも、手漕ぎボート釣りには個人の力では避けられない「転覆・落水」の危険が、常に付いて回っていることを忘れないようにしなければなりません


特に、小さなお子さんとの釣行については、これから先の季節は天候・海況に係わる無理は絶対にするべきではありません。


また、海の上に浮かんでいる時には、常に周囲のボートの様子も観察し、万が一、周囲のボートの落水事故を発見した場合、すぐにボート屋さんに連絡できるように準備をしておきましょう。



楽しさに気を取られて、つい忘れがちなことでもありますよね


手漕ぎボート釣りを愛する方々と、ずっと永く一緒に楽しく過ごしていくため、いつも自分に言い聞かせていることです







12月3日頃から、黒潮が関東に非常に接近してきています。


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かなり近い状態。分流が直接東京湾に入ってなんの不思議も無いレベルです。

その接近に伴い、大島東水道(伊豆大島と千葉の洲崎の間のことです)から暖流系の沖合水が東京湾、相模湾に流入しています。12月9日には海上保安庁から「急潮注意報」も発令されました。この注意報は沖合の観測船やブイが一定以上の水温の上昇を検知した場合に発令されます。


この沖合水は水温が高く、洲崎沖(広義の東京湾です)には20度台の海水が大規模に入り込み、それより北の海域にも水温の影響が出ています。


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「大島東水道からの流入」が黒潮の分流ということがよく分かりますね。

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浦賀水道に直接は届いていませんが、水温低下を抑えたり、上げ潮本流の勢いを増したりはしている可能性が有ると思います。


この急潮注意報をきっかけに今年の海水温について、調べなおしてみました。過去3年間の「12月7日」の海況図を並べてみます。


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ちょっと画像が見にくいかもしれませんが、過去2年はまだ15度を切っていません。

こうしてみると、僅かな差ですが現在の水温は過去3年間で最も低いことが分かります。


9月~10月末頃まで、浦賀水道の海水温は例年よりやや高めに推移していました。主な原因は黒潮が関東に接近していたことと思われます。11月に入り、黒潮が離れていったことにより、水温の低下は徐々に早まり、12月初めには上記の通り例年より僅かに低いと思えるレベルにまで低下しました。


しかし、今回の黒潮の急接近と、それに伴う暖流系の沖合水の流入で、今後の水温の低下にしばらく歯止めがかかる可能性があります。


(もっとも、気まぐれな黒潮がまたすぐに離れていってしまう可能性も十分あります







今年の秋(9月以降)以降、この海域での急潮注意報の発令は7回目になります。


9月4日、10日、13日/10月3日、17日、28日/12月9日(今回)


浦賀水道の海水温の低下が抑えられていた時期と、急潮注意報の発令の時期は重なっていますね。なお、過去の発令リストを見てみると、沖合水の流入は年によってかなりバラツキが有ることが分かります。また、黒潮との位置関係によっては大島西水道から相模湾だけに流入する場合もあります。


ちなみに、この沖合水の流入が大島東水道から入ると、相模湾では反時計回りの潮が流れることが多いそうです(「サキシオ」と呼ばれます)


9月22日の油壺釣行で、北風の中、表層だけに南からの力強い潮が流れ、「黒潮の分流かな?」と補足記事に記載したことがありました。急潮注意報が出ていた時期に近いことからすると、あながち的外れではなかったのかもしれません


程度の差こそあれ、年によって異なる黒潮分流の流入。もしかすると、この沖合水の流入の仕方が、今年の魚の釣れ方が例年と違うことの謎を解くカギのひとつなのかもしれませんね





2013年9月 6日 (金)

【安全対策】海のルールをタダで学べる?海難審判所の裁決事例!

海難審判所を知っていますか?


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ちょっと退屈な内容かもしれませんが、1つ安全を考える記事を挟んでおきたいと思います



時々ですが、時間のある時に水の事故(水難事故、海難事故)を調べることがあります。そんな時に目に止まってくる情報の中でも仰々しくて、遠い世界に感じるもののひとつとして、「海難審判所の裁決事例」があります。


海難審判所って、ご存じでしょうか?


リンク → Wikipedia「海難審判所」


仰々しい説明はWikpediaに譲ろうと思いますが、車に例えればわかりやすいかな?と思います。


「車の事故を起こすと運転者には3つの責任が問われる」


「刑事責任・行政責任・民事責任」


自動車免許をお持ちの方は教習所で習ったことがあると思います。船の事故も同じで、事故が起こるとこの3つの責任が発生します。海の場合、このうちの「行政責任」の審判を行うのが「海難審判所」になる、というわけです。



手漕ぎボート釣りで何か不幸な事故が起こったとしても、まさか裁判所みたいなところが絡んでくるなんて、考えたことは無いですよね


僕もそう思います。いや、思っていました。もっと正確にいうと、「自分には関係ないと思いたい」という感じです



意外かもしれませんが、海難審判の裁決事例には手漕ぎボートが絡むものもあるんですよ(数は少ないですが


「手漕ぎボート(船名なし)」


裁決の中では、こんな名前で出てきます。
いったいなんの事故で、どんな裁決が下っているんだろう・・・?


興味、ありませんか?







函館地方海難審判所
仙台地方海難審判所
横浜地方海難審判所
神戸地方海難審判所
広島地方海難審判所
門司地方海難審判所
長崎地方海難審判所
門司地方海難審判所那覇支所


重大な海難審判は東京の海難審判所で取り扱われますが、それ以外についてはこの8つの海難審判所で審判が実施されます。手漕ぎボートが絡むような事故は重大ではない(と思いたい)ので、興味があって覗いてみる時には地方海難審判所だけで良いと思います。


私達に身近な東京湾、相模湾を含む、茨城県~三重県沿岸は「横浜地方海難審判所」の管轄です。


海難審判の裁決事例は平成18年分から公開されていて、すべて(?)ネット上で裁決の内容を読むことができます


リンク → 海難審判所「裁決の閲覧」サイト 


参考までに、各地方海難審判所で公開されている裁決事例の中で「手漕ぎボート」が出て来るものの数は以下のとおりです(カヌー、ゴムボートは含みません)。


Saiketunokazu250904

※那覇のみ独立した地方海難審判所ではなく「門司地方海難審判所那覇支所」です。
※「手漕ぎボート」をキーワードにカウントしましたが、どうやらゴムボートと手漕ぎボートの区別が怪しいようです(手漕ぎボートで「気室破損」という損害が出てくる時があります)。あくまで参考程度にどうぞ。



どうでしょう?
意外に少ない?それとも多いと感じられるでしょうか?


個別の事件の中身に踏み込むつもりはありませんが、手漕ぎボート釣りをする人間として、おおまかに概要をまとめてみようと思います。ほとんどの事故は、手漕ぎボートが動力船(漁船かモーターボート)に衝突した、というものです。


・「手漕ぎボート側が回避行動をとらなかった
事故の原因の説明の中に、このくだりがほぼ必ず出てきます。主因は動力船側が見張りを怠ったことですが、手漕ぎボート側にも原因がある、ということです。手漕ぎボート側は遠いうちから相手の船に気が付いていたにも拘わらず、直前まで何の行動も起こさないことが多いらしいのですが、理由として「相手が気づいて避けてくれることを期待した」ことがよく挙げられています。


アンカリング(錨泊)中の手漕ぎボートでも、周辺の見張りと衝突回避行動を怠ると事故の責任の一端を問われることがあります。また、そもそも航路でのアンカリングは、法律で禁止されています。



・「手漕ぎボートでも形象物の掲出責任が免除されない場合がある
海上衝突予防法では、錨泊中の7m以下の小型船舶は球形形象物という定められた合図を掲げる責任が免除されているはずなのですが、航路や港付近、海岸付近など他の船やダイバーがいる可能性のあるエリアでは掲示の責任が手漕ぎボートでも免除されないようです。正直よく分からないルールですが、少なくとも裁決事例の中では常に指摘されています。指摘されてもどうしようも無いのですが•••(;^_^A。



・「手漕ぎボート側の重傷事例が多い
手漕ぎボート側の人が「衝突直前に身の危険を感じて海に飛び込んだ」事例が多いのですが、海に飛び込んだにも拘わらず、骨折や内臓の損傷といった重傷を負っているケースがあります。想像するに、飛び込んでも泳ぎ離れる間がなく、ボート船体又は衝突側の船体と体がぶつかることが避けられないのではないでしょうか?(あるいは衝撃で発生する水流に引き寄せられる?)。


車の事故と同じで、運動エネルギーが桁違いに大きい船とぶつかる衝撃は想像をはるかに超えるものなのかもしれません。動力船はプロペラがあることを考えると、恐ろしいですよね・・・。親子で乗っていたボートの例もあり、ゾッとしてしまいました(幸い軽傷事例でした)。



上記のような状況から考えて、自分なりに学ぶべきと感じたことは以下のとおりです。


・「海の上にいる時は、常に周辺360度の見張りを怠らない
→ 他のボートの異変に気付くためにも必要なことですね。タンデムの場合はお互い違う方向を向いて座ることが有効です。


・「航路の明示がある場合は決して航路内でアンカリングしない」。
→ 大津の富士山出しなどは年によって西側が航路にあたる場合があるので注意が必要です。


・「航路の明示が無い場合は、船の往来が有る範囲を余裕をもって避ける
→ 航路の明示が無い場合、法律的に港近くはかなり広めに航路扱いがなされるようです。


・「自分に向かって進んでくる船を発見した時には、相手が気づかない可能性を念頭におく
→ アンカリングしていても、オールを出して前方に向かって右寄り(1時~2時の方向)に前進するように漕いで相手の針路を避けることは可能です。相手をよく観察し、慌てずに行動すれば衝突は避けられると思います。回避行動に至る時は、早めにホイッスルを吹いたり大声を出して相手に自分の存在を知らせることも必要です。



初めてのことにはなかなか適切な行動が取れないものですが、予備知識をもち、心構えが出来ていれば、イザという時の行動をスムーズに取ることもできるかもしれません。


「海難事故」という言葉は、とても遠い世界のように聞こえますが、先達の経験の共有が気軽に受けられる、という点では、公開情報を一読してみると良いかもしれません。
なんといっても無料で読めるものですしね







海難審判所の裁決事例は、海で適用される法律を学ぶためにも役立つ教材だと思います。


裁決事例を読むたびに、「もっときちんと海のルールを知っておきたいな」と思うようになってきました。


手漕ぎボート釣りはず~っと楽しんでいきたい趣味です。

ちゃんと勉強してみようかな・・・?





2013年7月24日 (水)

【安全対策】緊急用のホイッスル。用意してますか?

忘れがちですが、ボート転覆は身近な危険です。


7~8月は水難事故、海難事故が多発する時季です。


「海水浴やマリンレジャーのシーズンだから当然でしょ


いえ、この季節の海の危険は、単に人が多いせいだけではありません。


「土用波」の季節なんです。





秋冬の低水温期に比べると生命の危険性は格段に低いですが、今の時期は転覆事故のリスクは高まっていると言えます。


ボートの転覆や、土用波の危険について、まだご認識ではない方は、是非以下の過去記事をご一読ください。手漕ぎボート釣りを一生の趣味とする上で、必ず知っておくべきと自分に言い聞かせた内容を、できる限り文章に落としてみたものになります。


【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その1)


【安全対策】手漕ぎボートの転覆について(その2)


【雑談】もうすぐ「お盆」。海にまつわる言い伝えってご存知ですか?


※これら以外にも、右のメニューにある「◎安全対策」カテゴリーにからご覧頂ける記事がいくつかあります。





前述の記事の中にも出てきますが、転覆を想定して準備すべきアイテムの中に、「ホイッスル」があります。濡れた手では操作できない(電話もかけられない)スマホに変わって、助けを呼ぶ手段です。


そんな状況にならないことが1番ですが、「土用波」や「一発大波」のリスクは自分の意思では避けることができません。イザという時のためにひとつ用意しておくと心強いです



さて、僕もライフジャケットやフィッシングベストにホイッスルを常備しているのですが、安いものを使っているせいか、まったく使わないのに、あまり長持ちしません。いつのまにかパーツが外れて無くなっていたり、ストラップの接続部が切れて落としてしまったりします。また、海水がかかり、サビが浮いてしまったものもあります(口に付けるものなので不潔さは避けたいですよね)。


でも、ようやく最近、安心して長く使えそうなホイッスルに行き着きました。


6回ほど釣行に持ち込んでますが、かなり良さそうですので、ご紹介させて頂きます



コクヨ 防災用救助笛【防災の達人】ツインウェーブ


Kokuyotwinwave
定価は525円。実際には380~450円程度で購入できます(2013年現在)。

地震などの災害時、がれきの下から救助を求める時等を想定して作られた防災用の笛です。日本音響研究所との共同開発で、人の耳に最も聞こえやすい2種類の音を同時に発するそうです。吹き口にキャップが付いており、清潔さを保ちやすい構造になってます。2009年1月5日の発売以来4年以上を経過し、震災等を経て世間の防災意識も高い中で、現在も評価が高い防災用ホイッスルです。


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iPhoneと並べてみました。


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吹き口のキャップを外した状態。


個人的な使用感を書いておきますね。


・実際に出る音は普通のシンプルな笛の音という感じですが、割れたりせずしっかりと芯の通った音です。

・ABS樹脂製なので、錆びる心配がありません(材質の特性として直射日光等による劣化は存在するので、2年程度を目安に買い替えようと個人的には思っています)。

・小さくて平たいので、ポケット等に入れても違和感がありません。携帯ストラップにもできるサイズです(実際に携帯ストラップにしている人もいるようです)。

・水没させてから吹いてみました。中に水が入っていると音がほとんど出ませんが、何度か強く吹くと水が切れ、音が出るようになります

・付属ストラップがとの接続がしっかりしており、ヒモ自体が切れない限り外れないと思われます。





不運にもボートの転覆を経験してしまったとしても、近くのボートがすぐに気づいて救助を呼んでくれればホイッスルは不要です。ボート釣りをする人はみんな仲間。お互いに気を配りつつ釣りを楽しみたいですね


逆に言うと、平日釣行や冬場の釣りが多い人、また人と違うポイントを攻めることが多い人は、救助要請の手段を出来るだけ確保しておくことが必須と思います。


僕は手漕ぎボート釣りを一生の趣味にしたいと思ってます。
同じ気持ちの方々と、少しでも安全に、永~く楽しんでいきたいですね





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