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2014年2月 5日 (水)

【温故知新?】ブックレビューNo.3「大江戸釣客伝」

「大江戸釣客伝(上)(下)」夢枕 獏 著(2013年講談社)


Bookreview3
時代ものが苦手でさえなければオススメです!面白い!o(^o^)o

第46回吉川英治文学賞、第39回泉鏡花文学賞、第5回舟橋聖一文学賞の3冠受賞作品です。


この本は刊行されたのが2011年、文庫化されたのが昨年(2013年)なので、温故知新というこのコーナーの主旨には合わない面もあるかもしれません


元禄時代に生きた、現存する日本最古の釣り指南書「何羨録」を書いた「津軽采女」を主人公とした時代小説ですが、決して釣り指南を目的とした本ではありません。作者が夢枕獏先生ということもあり、最初はちょっと違和感のような感覚を抱えながら読み始めました。


夢枕獏先生というと、SFやファンタジー系の派手なストーリーがまず浮かび、次に時代ものというと「陰陽師」のイメージが出てきます。どちらも僕は大好きなんですが、創作の大家という印象があり、どうしても江戸時代に実在した釣り侍の話と頭の中でつながらなかったんです



読み終えました。


僕が思い描いていたことは、ことごとく外れていました。
それも「大外れ」です


夢枕摸先生の筆力。


想像力に任せたファンタジーの気配なんて、微塵も感じられませんでした。緻密で時間をかけた取材に基づいて、元禄時代の人々の性格や交友関係を丁寧に調べ上げ、生き生きとした人物像を浮かび上がらせています。


いえ、そんな堅苦しい表現では足りません。
先生の筆は、読み手を元禄時代に連れて行ってくれる魔法です。僕達はこの本を読むことによって、生類憐みの令の時代を生きた市井の釣り師達の生き様を実感することができます
釣りは、竿や鈎で魚を獲ることを示す言葉ではありません。



もうひとつの大外れは、この本が「何羨録」の誕生に焦点を当てた物語ではないことです。読む前、僕は勝手に「津軽采女の人生と、何羨録を書きあげるまでの紆余曲折が描かれているにちがいない」と思い込んでいました。


むしろ、津軽采女の人生の詳細は省かれています(その代わり物語の最後に作者自身による補足という形で記されます)。同じ時代を生き抜いた釣り好き達の、響きあう命の煌めきが、群像として描かれています。


この本を読むと、心の中に何人もの新しく古い友人を得ることができます
時代は違えども、釣りを愛し、懸命に生きた人達。何もかもが違うのに、こんなに魅かれてしまうのは、彼らが皆、どこか不器用ながらもひたむきに生きた姿と、釣りが好き、という心の共通点があるからなのでしょうか・・・。


竿は、人生を歩くための「杖」である。


できればいつか、登場人物達のお墓を巡って歩きたいと思います。





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コメント

こんにちは
机上の釣り、全開ですね
最近電車で移動する事が多く、本棚から適当に取出し読んでいます
新造のような釣り○○は、いつの世でもいますね、またギャンブルも一緒なのが
今も同じです
子供の頃、雨の日、家の窓から、路地を流れる雨水に浮きを流した事も思い出しますね
そんなに古い本ではないですが
坂井廣著の大釣りの極意なども、たまには良いと思います
磯釣りを始めた頃読みたかったですね

> たけちゃん 様
コメントありがとうございます!

返信が遅くなってすみません。

僕も、ほとんど通勤時間の電車の中で本を読んでいます。
スマホを控えて目をいたわる効果もあるようなので、なかなかはかどっております(^o^;)。

たけちゃんさんも大江戸釣客伝をお読みなんですね。
新造の出てくる場面は印象深いものばかりです。たぶん、釣り好きはみな共感する部分があるのでしょうね。
いくつか前のたけちゃんさんの記事に「行き着くところは家庭崩壊」というくだりがあったと思うのですが、読みながら新造を思い出していました

大釣りの極意。さっそく手配致しました!
偶然にもこっとんさんのところでも紹介されていましたね。これは読まずにはいられません

まだ数冊未読の本があるのですが、どうも嵌り始めていていけません。
今は鳥海書房で買い物をするために小遣いを貯めている状態です。竿より高い本を買ってしまいそうな気がします

釣りの道には連綿と数えきれない先達の歴史があることを、あらためて知りました。
もしタイムマシンが出来たら、時代を超えて1番楽しい談義が出来るのは釣り好き達だろうと思います

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